はじめに
今年(2020年)は庚子(かのえ ね)、そして私は年男でした。
還暦からさらに一回りしたことになります。
私は、2020年末現在、広島市内2か所の保険薬局(同一グループ)で、月・木の週二日、一人薬剤師として働いています。
さて今年は、新型コロナウイルスに翻弄された激動の第一年目になりました。
おそらく、このパンデミックが来年中に完全終息することはないと思われます。
私の勤務先でも、緊張の日々が今後も続くことになりそうです。
情報リテラシーの向上を目指して
コロナ禍の中で、世間では様々な情報が飛び交い、どれが真実か一見しただけでは判断がつきかねる状況が続いています。
信頼できる情報はどこにあるのか、そしてそれをどのように理解したらよいのか、with/after コロナの世界で、New Normal(新しい日常)を生き抜いていくためには、情報リテラシーの向上が必須と言えそうです。
一般市民の一人ひとりが、自分の頭で考えて行動するために、今こそ「文科系と理科系の教養を併せ持つ必要性」(作家・佐藤優)があることを痛感します。
サリドマイド事件~世界最大の薬害~
催奇形性を有するアビガン錠(抗インフルエンザ薬)が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する国内3番目の治療薬として、今まさに追加承認されようとしています。
同じく催奇形性を有する薬物としては、かつて睡眠・鎮静剤として使用され大きな被害を出したサリドマイドがよく知られています。
サリドマイド製剤は、1960年(昭和35)前後に世界40か国以上で販売され、世界最大の薬害事件(四肢短縮などの奇形)を引き起こしました。
今年5月、そのサリドマイド被害者ご本人からメールを頂きました。
初めての経験です。
この方は、「サリドマイド訴訟に加わることも、和解後の認定を受けることもしなかった」、つまり未認定の方です。
「やむにやまれぬ諸般の事情で、名乗り出ることができなかった」のです。
そのほか、サリドマイドによる障害であると気付いていない方など、サリドマイド被害者は、認定309名(日本の場合)以外にも実在することが分かります。
この度、サリドマイド関連の事実関係について、さらなる見直しを行い、自著『サリドマイド事件~世界最大の薬害 日本の場合はどうだったのか~』(アマゾンKindle版)を第4版(2020年5月20日)としました。
https://www.amazon.co.jp/dp/B00V2CRN9G
なお、Web版もありますが、図版は省いています。
Kindle版には、図版の詳細な説明も付けています。
サリドマイド事件と情報リテラシーの向上
サリドマイド事件について見直す中で、信頼できる著者や書籍であっても、見過ごすことのできない間違いが幾つもあることに気付きました。
そこで、改めて『サリドマイド事件(第4版)』から最重要項目のみを抜き出して、自分用の『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』作成を試みました。
それが、『サリドマイド事件と情報リテラシーの向上』(アマゾンKindle版、2020年10月1日)です。
https://www.amazon.co.jp/dp/B08KGT9VLT/
同書では、「データを基に世界を正しく見る習慣」をつけるために、保険薬局の薬剤師として手の届く限りではありますが、とことん事実関係を追及しています。
なお、『サリドマイド事件と情報リテラシーの向上』はコンパクト版です。
文章や図版の詳細な説明については、必要に応じて完全版『サリドマイド事件(第4版)』をご覧ください。
オンディマンド(ペーパーバック版)の発行
『サリドマイド事件と情報リテラシーの向上』について、オンディマンドで1冊ずつ注文のたびに印刷できるペーパーバック版(紙の本)を作成しました。
https://www.amazon.co.jp/dp/B08KGT9VLT/
(2020年11月1日)
インプレスR&DによるNextPublishingというシステムを利用しました。
次のようなものです。
POD(プリントオンデマンド/必要部数だけ印刷する技術)を活用した、まったく新しいかたちの「内容・価格を自由に決める」個人出版支援サービスです。
特別なスキルは不要。
原稿(PDF)があればOKです。
1冊から無料で本を作って、誰でもかんたんにAmazonで販売できます。
もちろん、紙の本なので、電子書籍と違って印刷費はかかります。
しかし、それ以外は基本的に全て無料です。
私の場合、紙の書籍の原稿(PDF)は、以下の手順で作成しました。
注)私のKindle書籍(電子ブック)は、epub形式で作成しています。
- 原稿(PDFファイル)を作るため、Wordを用意します。
- Wordの中に、電子書籍の内容(テキスト文章と図版)を移します。
- 完成したWord原稿を、PDFファイル形式で書き出せば完成です。
なお、本の作成は、必ずしも公に出版することを前提とするものではありません。
例えば、個人用に手持ちするためだけの製本も、一冊から印刷可能です。
その場合でも、原稿ファイルの保管料などの費用は一切発生しません。
注)『サリドマイド事件』の内容を充実させることによって、『サリドマイド事件と情報リテラシーの向上』の内容を吸収できるため、現在サリドマイド事件と情報リテラシーの向上』は出版停止にしています。
「いしずえ」オフィシャルWebは、修正されませんでした。
この項は、以下のページに追記(移動)しました。
⇒「サリドマイド被害者のための福祉センター「いしずえ」」
(2021/01/16)
以下、参考資料
現職の国会議員、新型コロナウイルス感染症で死去
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の今年(2020年)最大の波が年末に襲来しています。
そうした中で、先日(12月27日)、現職の国会議員(男性、参議院議員)がCOVID-19によってお亡くなりになりました。
持病があったとはいえ、53歳の若さでした。
心よりご冥福をお祈りいたします。
議員が発熱したのは12月24日であり、翌25日にはPCR検査を電話予約(2日後の27日検査予定)しています。
そして、検査当日(12月27日)、秘書が運転する車で医療機関に向かう途中、容態が急変して車中で意識を失いました。
救急車を要請しましたが、搬送先の病院(東京都内)で死亡が確認されました。
そしてその後の検査で、新型コロナウイルスに感染していたことが判明しました。
現職の国会議員が、発熱後すぐに医療機関を受診しなかったのはなぜか、そして、PCR検査の予約を2日後まで待たなければならなかった理由は何なのか、危機管理の観点からは種々の疑問が残ります。
COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)を公開/日本感染症学会
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する特効薬がない中で、COVID-19ワクチンの開発・普及が全世界的な急務となっています。
厚生労働省には、過去のワクチン行政の失敗(MMR、ジフテリアや子宮頸がんワクチンなど)を踏まえて、有効性・安全性が担保されたワクチンに正確な情報を添えて供給する義務があります。
そして一般国民には、それでも残るリスクを取るか取らないか、自ら判断する覚悟が求められています。
そうした中で、CareNetニュースは、12月30日、日本感染症学会による「COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)」について、下記のような紹介記事を掲載しました。
https://www.carenet.com/news/general/carenet/51453?utm_source=m1&utm_medium=email&utm_campaign=2020122404
欧米では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種が2020年12月初旬に開始され、わが国でも接種開始が期待されている。
日本感染症学会では、学会会員および国民に対し、現在海外で接種が開始されているCOVID-19ワクチンの有効性と安全性に関する科学的な情報を提供し、それぞれが接種の必要性を判断する際の参考にしてもらうべく、COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)を作成し、12月28日、学会サイトに公開した。
今後、COVID-19ワクチンの国内外における状況の変化に伴い、内容を随時更新する予定という。(適宜改行を加えた)
同記事では、参考として、提言全文(PDFファイル)のURLも記載しています。
一般社団法人日本感染症学会ワクチン委員会「COVID-19 ワクチンに関する提言(第1版)」
その「COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)」を読むと、最後に「終わりに」として、以下のように結んでいます。
ワクチンも他の薬剤と同様にゼロリスクはあり得ません。
病気を予防するという利益と副反応のリスクを比較して、利益がリスクを大きく上回る場合に接種が推奨されます。
国が奨めるから接種するというのではなく、国民一人一人がその利益とリスクを正しく評価して、接種するかどうかを自分で判断することが必要です。
そのための正しい情報を適切な発信源から得ることが重要であり、国や地方公共団体および医療従事者はそのための情報発信とリスクコミュニケーションに心がける必要があると考えます。
COVID-19 の終息に向かって有効で安全なワクチンが、今後正しく理解され、広く普及してゆくことを願っています。(適宜改行を加えた)
同提言には、間もなく日本でも始まるであろうCOVID-19ワクチン接種について、一人ひとりが知っておくべき情報は、漏れなく書かれていると言ってよいでしょう。
ただし、その内容を全て読みこなすには多少の知識が必要です。
信頼できる医療関係者などから話を聞いて、それらを正しく理解する能力もまた情報リテラシーの一つと言えるでしょう。
アビガン錠は切り札となるか
アビガン錠(抗インフルエンザ薬)が、一部識者からは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療の特効薬的な存在として紹介されています。
ただし、2020年現在、アビガン錠はCOVID-19治療薬として国から認められているわけではありません。
そこで、アビガン錠をCOVID-19治療薬として追加承認するための手続きが進められています。
しかしながら、2020年末までには決着がつきませんでした。
アビガン錠の追加承認見送り・2020/12/21
厚生労働省は、12月21日、薬事・食品衛生審議会の部会を開きました。
そして、アビガン錠の製造販売元である富士フィルム富山化学(株)が提出した「抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠」の製造販売承認事項一部変更承認申請(一変申請)」について審議しました。
同部会の審議では、アビガン錠のCOVID-19に対する有効性を現段階で明確に判断することは困難である、とされ継続審議となりました。
つまり、アビガン錠が2020年中に追加承認されることは無くなりました。
真の専門家は誰か、確かめてみよう
アビガン錠の追加承認をめぐっては、識者の間でも意見が分かれています。
例えば、以下のお二人の先生方の投稿は、真っ向から対立しています。
両方の記事を読み比べることによって、情報リテラシーは限りなく向上することでしょう。
まず、アビガン錠の追加承認見送りを受けて、メディカルトリビューンに、以下の記事が掲載されました。(2020年12月22日 15:23配信)
整形外科・川口浩
「アビガン承認見送り」の茶番
~「医療のアマチュア」と「無責任な為政者」がもたらす悲劇~
https://medical-tribune.co.jp/rensai/2020/1222534114/
そして、この川口浩先生の投稿に対する反論記事が、同じくメディカルトリビューンに掲載されました。(2020年12月28日 16:47配信)
筆者は岩田健太郎先生です。
感染症・岩田健太郎
コロナはインフルの類なんて寝言を言うな!
本論の前に:アピガン承認見送りは妥当な判断だ(導入部分の文章)
(Web作者注、誤:アピガン、正:アビガン(一般名:ファビピラビル))
https://medical-tribune.co.jp/rensai/2020/1228534295/
川口・岩田両先生は、共にメディカルトリビューンの連載記事(Doctor’s Eye)の著者です。
それぞれご自分の連載枠を持っており、今回はそれを使った記事となっています。
岩田健太郎先生の投稿の書き出しは、次のようになっています。
川口氏は「『ファビピラビルの承認見送り』の学術的根拠はあまりに希薄であり、サイエンスの公正性、国民の健康を無視した、ルール違反に基づいている。ここまで来ると、混乱、迷走を通り越して、茶番劇である」と、厚生労働省に対して容赦ない批判を行っている。
岩田先生は、記事本文の中で、川口先生の「「アビガン承認見送り」の茶番」と題する厚生労働省批判に対して、「アビガン錠の承認見送りは妥当な判断」との見解を示しています。
両先生の主張の是非はひとまずおくとして、私自身は、岩田先生が示された以下の基本原則に対して全面的に賛同いたします。
リスクを許容できるだけの大きなメリットがなければ、臨床現場での使用は容認されない。
アビガン錠は、あくまでもの軽症・中等症までの患者の治療薬と考えられます。
そうした薬物の副作用として、催奇形性などが許容できる範囲の副作用であるかどうか、リスク&ベネフィットの観点から検討すべきであると考えます。
アビガン錠の追加承認とは何か
アビガン錠の追加承認とは、アビガン錠(抗インフルエンザ薬)を新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として認め、広く一般に使用できるようにすることを意味します。
アビガン錠は、既に以下のような効能・効果を有する薬物として、製造販売承認を取得(2014年3月24日)しています。(アビガン錠200mgの添付文書より)
【効能及び効果】
新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果不十分なものに限る。)
アビガン錠には催奇形性があり、通常のインフルエンザウイルス感染症で使われることはありません。
来るべき新型又は再興型インフルエンザウイルス感染症に対して、既存の抗インフルエンザ薬が全く耐性になったときに備えて、日本国政府によって一定量が備蓄されています。
なお、アビガン錠は、劇薬・処方箋医薬品に指定されていますが、薬価基準には収載されていません。
アビガン錠の立ち位置は?
富士フィルム富山化学(株)の試験は、COVID-19の患者を対象にした単盲検ランダム化多施設共同比較試験です。
対象患者は、人工呼吸器をつけていない入院患者です。
つまり、軽症・中等症までの患者ということができます。
そして同試験の結果をみると、アビガン錠投与によって、PCR検査で陰性になるまでの期間が2.8日短縮されたというレベルの内容となっています。(対照群14.7日→介入群11.9日)
COVID-19の大多数は、通常は治療薬なしで自然に治癒します。
そこで、COVID-19の治療薬として最も必要とされるのは、重症化を防ぎ死亡リスクを低下させることです。
アビガン錠に、そこまでのパワーは期待できそうにありません。
それに対して、アビガン錠には催奇形性があります。
また、尿酸値上昇や肝機能異常など、副作用が多く出ています。
アビガン錠に、そのリスクを取る価値があるかどうかが問われています。
追記
ポビドンヨードうがい液は新型コロナウイルス感染の拡大予防に役立つか
(吉村洋文・大阪府知事のまやかし)
ケネディ暗殺と宇宙中継(そして奇跡の日本語ナレーション)
追記:2020年12月
今年2月、KDDI MUSEUM(東京都多摩市)を設立準備中の関係者から、当Webを見たと言って突然のメールを頂いた。
同MUSEUMは、日本における国際通信の歴史などを紹介する史料館として、近々リニューアルオープン予定とのことである。
そして、その中の衛星通信コーナーの映像で、前田治郎さん(故人)のナレーションを使いたいとのこと。
そのためには、ご遺族の承諾が必要であり、私がその仲立ちをすることになった。
先様からは早速ご快諾を頂き、直接二人でご挨拶に伺いたかったのだが、このコロナ禍で年末まで延び延びとなっている。
日本海海戦(東郷ターンは丁字戦法ではなかった)
追記:2020年7月
さる著名な戦史研究家からメールを頂いた。
丁字戦法に関することなのだが、私の理解が追い付かず、このページにはまだ何も手を付けることができないままとなっている。
朝ドラ「あすか」-和菓子と考古学
追記:2020.9.27
「あすか」でヒロインを演じた竹内結子さんがお亡くなりになった。
このWebページのアクセス数が急増したことで初めて知った。
まだ40歳という若さであった。
心よりご冥福をお祈りいたします。